トランプ米大統領とテスラCEOイーロン・マスク氏の対立激化により、投資家のリスク回避姿勢が強まっている。マスク氏は先月末まで「特別政府職員」として政府効率化省(DOGE)で政府支出削減を担当していたが、今回の対立により政権から完全離脱することとなった。
両者の論争は、トランプ氏の重要政策を含む包括的税制・歳出法案が米国債務に与える潜在的影響をめぐって開始された。マスク氏は同法案について「政府財政赤字を2.5兆ドル増加させ、トランプ大統領の関税措置は2025年後半の景気後退を招く可能性が高い」と批判。背景には法案に含まれる電気自動車支援策削減があるとみられる。
これに対しトランプ大統領は失望を表明し、マスク氏の率いる全ての企業との政府支援の契約打ち切りを示唆した。
マスク氏も論争をエスカレートさせ、性的人身売買罪で起訴されたジェフリー・エプスタイン元被告関連文書にトランプ氏の名前が記載されていると主張。さらにトランプ大統領の弾劾とヴァンス副大統領への交代を求めるソーシャルメディア投稿に賛同するなど、政治的対立は修復困難なレベルまで悪化している。
対立先鋭化の影響は、株式市場にも波及した。5日のニューヨーク株式市場でテスラ株は一時17%超下落し、時価総額は1日で約1,500億ドル(約21兆5,000億円)減少した
トランプ大統領は「予算を節約する最も簡単な方法は、マスク氏への補助金と契約を打ち切ることだ」とSNSに投稿し、マスク氏をけん制した。これに対しマスク氏は「スペースXは宇宙船“ドラゴン”の退役を直ちに開始する」と反撃し、国際宇宙ステーションへの物資輸送を担う重要プログラムの廃止を示唆した。
今回の事態は、政治リスクが株や仮想通貨市場に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにした格好と言えそうだ。